なんでこうなった?ポーセラーツ転写紙の化学反応のはなし



 

こんにちは。

神奈川県川崎市の
ポーセラーツ・磁器絵付け教室
アトリエセラン なが田カガリです。

 

 

吹き出し

せーたん

ポーセラーツで作ったお気に入りの食器で生姜焼きをチンしたら変なシミができちゃったんです(涙)

 

 

吹き出し

ぼっくん

せっかく作った器なのに、春雨サラダを入れたら色が変わっちゃったの。

 


あらあらそれは悲しかったね(涙)
一生懸命作ったお皿や器が
ちょっとしたことで

転写紙が剝がれちゃったり、
色が変わってしまうことって
時々あるみたい。

 

どうしてそんなことが
起こってしまうのか?

明確な理由はわからないけど
いろいろなケースが考えられるので
今回はこの件について
考えていきたいと思います。

 

この記事を書いている私は
絵付け歴25年
・ポーセラーツ認定講師
・彩色チャイナペインティング本部講師
・ペット肖像画作家

で、昨年絵付けをお休みしている間に
陶磁器と顔料について
いろいろとお勉強したひとです。

 

 

それでは早速本題に入りましょう。

 

なんでこうなった? ポーセラーツ転写紙と顔料の不思議なおはなし

 

先日、仲良しの絵付けの友達
ripple tokyobay 藤本真理子先生
生徒さんからのご相談を
私にもシェアしてくれました。

 

真理子さん

生徒さんが長年使っていた食器で生姜焼きをチンしたら色が変わっちゃったんだって。何らかの化学反応起こしてると思うんだけど、カガリさん、原因わかる?

 

と言って、見せてくれた写真。

それは、とてもきれいな
パステルイエローと
マグノリアの転写紙が美しい
素敵なプレートで

パステルイエローの半分くらいが
茶色く変色している写真でした。

 

 

普通、
転写紙を貼った食器というのは
電気炉に入れて
800度前後で焼成するので

レンジでチンしても
食洗器で洗っても
転写紙が剥がれたり
変色したりということは
まずありません。

 

わたし自身もこのようなケースは
初めて見たので
ちょっとびっくり。

なので、私なりに
変色の理由を考えてみました。

 

理由1化学反応による変色

 

上絵付けの顔料は
金属酸化物と鉛成分で
構成されています。

黄色の顔料はアンチモン酸鉛
という色素なのですが

今回は生姜焼きの汁の成分と
なんらかの化学変化を
起こしたことが考えられます。

 

 

アンチモン酸鉛という名前だから
酸に反応したか
鉛に反応したか?
のどちらかという気がします。

 

また、このプレートは
制作してから年数が経っており
普段使いで登場回数も多かったため

転写紙に少しずつ傷がついたり
経年の劣化で実は一部に
剥がれが生じていた可能性も
考えられます。

 

そこに今回たまたま
生姜焼きの汁が
とどめを刺してしまった?

などと推察をしました。

 

理由2レンジでチンが変色させた

 

電子レンジが
食品を温める仕組みは
食品を振動させてその熱で
食品の中から温めるのは
みなさんご存知の通りです。

今回のケースは
転写紙に経年劣化による
傷やヒビが入っていて、

そこにたまたま生姜焼きの汁が
入り込んでいた。

そのまま食卓に出すのなら
そのあと洗うので問題はなし。

しかし、
レンジでチンしたことで
汁が膨張して
転写紙を押し上げたのではないか?

 

先に書いたレンジの
温めの仕組みにより
転写紙の下で汁が振動、
膨張したことで
剥がれたのかもしれません。

また、剥がれたというより
変色した感じということですが、

転写紙はとても薄くて
完全な不透明なものではなく、
顔料によっては下地が透けるので

入り込んだしょうがの汁が
パステルイエローよりも
濃い色だったため

転写紙の色が茶色く変色したように
見えたのかもしれません。

 

本当に窯業(ようぎょう)
というのは
化学反応を考慮して作品を作る
奥の深い世界なので

一見すると簡単に見える
転写紙の世界も
まだまだ解明が難しい事例が
沢山あるのですね。

 

変色したお皿の不思議。洗い方の違いで落ちる、落ちない、どっち?

画家とイラストレーターの違いは?

次のケースです。

これも同日に真理子さんが
シェアしてくれた不思議な
器のはなし。

 

再びの真理子さん

真理子さん

こっちの器は春雨サラダを入れていたら変色しちゃったらしいの。
でも手洗いしても落ちなかったのが、食洗機で洗ったら落ちたんだって。漂白剤が入っていたからなのかな?なんでかしら?

 

ふんふん、なるほど!

これについても
私なりに推察したことをもとに
真理子さんと一緒に考えてみました。

 

推察1変色の理由

 

今回のケースは
長時間春雨サラダを入れていたことで

酸により転写紙の顔料が溶解して
色素の中に入り込み、

変色したものと考えられます。

 

もともと陶磁器に使用する
釉薬や顔料は酸に弱いのです。

長時間、器に酸の強い食品を入れると
酸に反応して、
鉛やカドミウムが溶出したり、
変色してしまうことがあります。

 

※こちらについては
食器の安全性について
以前に記事を書いているので
参考にしてください。

 

推察2食器を手洗いしたけど変色は直らなかった理由

 

食器用洗剤は基本的に
中性洗剤です。

つまり、中性。

 

酸との化学反応で変色した食器が
食器用洗剤では落ちなかったのは
食器に含まれる成分が中性で

界面活性剤と相まって
汚れを浮かせる作用(乳化作用)しか
無いからなのかもしれません。

 

推察3食洗器で洗ったら落ちた。なぜ?の理由

 

多分、これが正解なのでは?

と、真理子さんと
夜中に盛り上がったのが
以下の理論。

 

手洗いで落ちなくて
食洗機で落ちたのは

酸性の汚れに対して
食洗機の洗剤がやや
アルカリ性寄りだったからでは?

という考えです。

 

せーたん

 

なるほど!それで中和されて落ちたと推測できそう!
すごい!

 

 

食洗機用の食器に
漂白剤の成分が含まれていた場合
洗剤の成分はアルカリ性です。

 

漂白剤の成分を調べると
(ブリーチの成分)

成分が次亜塩素酸ナトリウム、
界面活性剤
水酸化ナトリウム

液性がアルカリ性

となっています。

 

今回のケースは
酸で変色したことが原因と考え、
アルカリ性の洗剤で中和させれば
汚れが落ちるのでは?

と、推測しました。

 

たとえば油汚れって
重曹やセスキ炭酸ソーダで
スルッと落ちますよね?

そしてひどい油汚れには
強アルカリ水を使用すると
面白いように汚れが落ちます。

 

油汚れは酸性で
アルカリ性の洗剤で中和させることで
汚れが浮き上がって落ちる

ということなので

それと同じことなのかなと
考えました。

 

いずれにしても
転写紙を貼った面や
絵の具で絵付けした面は

なるべく強い酸が触れないように
気を付ける方が良いと思います。

 

まとめ

 

いかがでしたか?

転写紙を貼った食器の
色の変色について

今回は私なりに推測したものを
絵付け友達の真理子さんと一緒に
考えて
それぞれに答えを導いでみました。

最後に軽くおさらいしてみると

 

レンジでチンが変色させた

CHECK!1. 転写紙の顔料
アンチモン酸鉛が
何らかの理由で生姜焼きの汁と
化学反応を起こして変色した。

2. 経年劣化で傷や剥がれが
生じていた転写紙の中に
生姜焼きの汁が入り込み
レンジでチンしたことで
振動、膨張し、
転写紙を押し上げたので
汁が透けて見えた

 

 

 

酢の物で変色した食器を食洗器で洗ったら落ちた。

CHECK!1. 酸で変色した汚れだったため
アルカリ性の洗剤で洗ったことで
中和されて汚れもしくは変色が落ちた。

 

ということだと思います。

 

もともと陶磁器に使用される
釉薬には鉛やカドミウムが含まれています。

そして、それらの成分は酸に弱く
長時間酸に触れると

鉛やカドミウムが
溶出してしまうことがあります。

 

なので近年は
耐酸性の絵の具が
主流になってきているのですが

焼成温度を低めにしてしまうと
ごく稀に酸に反応して
絵の具が溶出してしまうことが
あります。

 

もともとピンクや青は
高温焼成の方がパキッと
きれいに発色しますよね。

なので、食器として使うなら
なるべく800~820度くらいでの
焼成を心がけた方が良いです。

 

特に青は要注意で
酸に弱いため溶出がしやすいので
できれば食品を置く場所には
使わない方が無難です。

できれば
プレートのリムの部分など
青色を使う場所は
気を付けて使ってください。

 

 

 

せーたん

青い絵の具って艶が出にくくて、フラックスを足したりしてたけど
フラックスって鉛が多そうだよね。

 

そうだね、
クリスタルガラスって
鉛の成分が多いって知ってる?

鉛は顔料に含まれたガラス質を
溶かして、艶を出しやすくする
働きがあるんだよ。

普段使う食器を作るなら
使用を避ける方が良いね。

 

クリスタルのグラスに
100%のオレンジジュースを
入れると鉛が溶け出して
危険だと聞いたことがあるよ

と、真理子さんも
おっしゃっていましたが、
知らずに使用しているのは
大変怖いことです。

 

食器についても
表には豪華な装飾や
転写紙が貼ってあるような器でも

内側に模様がなく、
あってもワンポイント程度
という食器が多いのは

製造する側の方々が
キチンとして知識があり、
気を付けているからなのですね。

そうしないと
国の食品安全基準にパスしないので
販売ができないのです。

 

一方で、
自分で自由に転写紙を貼って
好きなデザインで
食器作りを楽しめるポーセラーツは

こういう正しい知識を知らなくても
好きな転写紙を自由に貼れるので

知らず知らずのうちに
危険なことをしているかもしれません。

 

ラスターでさえも
口の当たるところに
塗っている作品を目にすることが
ありますから、

インストラクターに
キチンとした知識が無いと
生徒さんは知らないまま

普段使いしたり、
また違う誰かに
教えてしまうかもしれません。

 

本当なら
こういった器の知識も
資格取得のカリキュラムに
入れるべきなんじゃないかと

自分が色々勉強してみて
実感しました。

 

窯業(ようぎょう)というのは
本当に奥が深く、
沼にハマると底なしで
どこまで行っても
ゴールにはたどり着けません。

 

もしもこの記事を
最後まで読んでくださいましたら
今一度
食器の安全性について
考えていただきたいと思います。

 

食器の安全性について
以前に記事を書いているので
参考にしてください。

 

 

それでは今回はこの辺で。

 

またねー